北インド・ワラーナシー再び

カジュラーホーからワラーナシーへ
 約10年前、2008年12月にワラーナシーを訪ね、とてつもない感動を覚えたことを記憶している。近郊のサールナートを訪ね、ブッダ(仏陀)の足跡の一部に触れ、“ブッダ”をもっと旅したい衝動にかられたことを思い出す。それがこれから旅をする“ブッダ巡り“のモーチベーションになっているわけである。スケジュールの関係で既に訪問したサールナートについては今回は割愛し、またワラーナシーそれ自体についても前回訪問して本ブログにおいて既に記録した箇所については今回は割愛させていただきたい。
 そうは言っても、ワラーナシーのスタートは、やはりガンガー、ガート、沐浴である。それほど、魅力のある所なのである。

あらためてワラーナシー
 懐かしさもあって、ガートへ向かう。相変わらず、朝早くから沐浴にいそしむ人々がガンガーで身を浄めている。

Sribrihaspati temple
ホテルからガンガーに向かう。大きな通りは相変わらず混雑している
空港や鉄道駅方面への方向を標示している道路標識
朝のガンガーとガートの風景
ガート(ガンガーの川岸にある階段状の足場)
沐浴中の女性達
ガートで行われるバラモン(司祭階級)によるプジャ(礼拝)。プジャとはヒンドゥー教の司祭であるバラモンが、日没時の18時頃、燭台に火を捧げて祈る神像礼拝の儀礼。右側がガンガーである
プジャはダシャーシュワメード・ガート(Dashashwamedh Ghat)付近で毎日行われている。神像に供物を直接供えて礼拝する儀礼や、バラモン教の伝統に則りヤジュニャと呼ばれる祭火に供物を供えて神々に犠牲を贈る儀礼など多様である

このような静かな空間もある
 沿道の人々の出入り、牛、インド人の物売り、サイクルリキシャ、すれ違うオートリキシャーの疾走と耳を裂くようなクラクションの音、ガート近辺の混雑、夜のある意味では宗教行事であると同時に芸術的とも言えるプージャ(礼拝)、…等々、 “混沌”という言葉がよく合うワラーナシーの持つ魅力であり、この神聖な土地が三島由紀夫の「豊饒の海」や遠藤周作の「深い河」の舞台として登場するゆえんでもある。このことは、前回の訪問でたっぷりと味わい、拙著(ブログ)「北インド・ワラーナシーとサールナート」でご紹介した。御面倒をおかけしますが、ご参照ください。

バナーラス・ヒンドゥ大学(BANARAS HINDU UNIVERSITU, BHU)
 今回は、前回のような躍動感はないが、これからの訪問でワラーナシーの持つ違う側面、誤解を恐れずに言うならば、一種の大学を中心とした「文教地区」、大学周辺の「下町的雰囲気」の存在みたいものをご紹介したい。
 「バナーラス(あるいはワラーナシー)・ヒンドゥー大学(BHU)」を訪ねた。公式の訪問ではないので、見学に行ったと言う方が正しいのかもしれない。
 空港や駅から来たオートリキシャーは、市の中心であるダシャーシュワメード・ロート近くにあるゴードウリヤー(Godowlia)交差点手前(チャーチ・クロッシング)までしか入れないので、そこから遠方へは乗り合いリキシャーの乗り場から移動することになる。リキシャーに「ワラーナシー・ヒンドゥ大学」と聞くと、「乗れ」と言われる。よく分からないままに乗り合いリキシャーに乗って約2キロメートルほど南下すると、終点のような所で他の人達が降り、私も降りるように言われる。自分の現在位置が確認できないのでうろうろしていると、若き美女から“Could” を使ったエレガントな英語で「どうしました。私…」と笑顔を向けられる。私の文章に出てくる女性はほとんどの場合に美女、そして優雅な方々であるが、何故かそうなのだからどうしようもない。と言うか、嬉しい限りである。「ワラーナシー・ヒンドゥ大学に行きたい」。「学部はどこですか」。もぞもぞしていると、「観光客ですか?」と畳みかけられる。ちょっと焦って「はい、そうです」。「分かりました、ここは大学の入口です。大学はとても広いので、ここからリキシャーで移動します。一緒に行きましょう」。「もちろん」とは言わなかったが、にこっと「サンキュー」。
 彼女の所属学部は聞き損ねたが、この大学(BHU)は、インド六大国立大学の一つで、パンデッド・マラヴィアがインドの芸術、文化、哲学、音楽、サンスクリット等の研究の中心となる施設として1917年に建設したそうである。大学のことを色々と説明をしていただいたが、彼女も仕事の最中らしいので、「そろそろ、…」と切り出したところ、「大学の中心近くには図書館、寺院があり、北側にはバラット・カーラ・バワンBharat Kala Bhawanインド美術館があるので是非お尋ねください。ここから徒歩で行くことができます」と教えられた。「本当に楽しい、そして貴重な情報をありがとうございました」。

チャーチ・クロッシング付近。ワラーナシーの市街で最も混雑するエリアの一つ
バナーラス・ヒンドゥ大学。女子大学
インターナショナル・センター
大学構内を移動しているリキシャー
バナーラス・ヒンドゥ大学(BHU)
医学研究所
ラクシュマン・ゲストハウス

寺 院
 ルンルン気分でステップを踏んで、美女に教わった構内にある寺院へ向かった。リキシャーのおじさんから声がかかったが、この楽しい気分は譲れない。「ヴィシュワナート寺院」と再度声がかかったが、むきになってステップを踏んでやった。ありました、大学構内にある「ヴィシュワナート寺院」が。ガンガー近くにある同名の「ヴィシュワナート寺院(ゴールデン・テンプル)」はヒンズー教徒以外は入れないが、ここの「ヴィシュワナート寺院」は自由に見学できる。周辺にはお土産屋さんもあり、また、ヒンドゥー教の神様が色々と飾ってある。

ヴィシュワナート寺院
ヴィシュワナート寺院
ヴィシュワナート寺院内部
寺院内部
担当者が来て、供えられた古い花を取り除いてリンガの清掃をする
清掃後、新しく花を供える
寺院から離れ、緑豊かな植物園に近接する中央図書館に向かうが閉館中

 図書館が閉館中なので、ここからリキシャーで北(旧市街)に向かって約2キロメートルの場所にある「ドゥルガー寺院」と「トゥルスィー・マーナス寺院」を訪れる。ドゥルガーとは、シヴァ神の妻である女神で、10 or 18本の手に武器を持つと言う。この戦いの女神を祀っている「ドゥルガー寺院」を最初に訪ねる。寺院の外観はすべて真っ赤に塗られている。猿がいるので「モンキー寺院」とも呼ばれるそうだ。

「ドゥルガー寺院」の赤い壁が見えてくる
ドゥルガー寺院の本堂はヒンドゥー教徒のみが入れる
ドゥルガー寺院

 「ドゥルガー寺院」の南側に近接して「トゥルスィー・マーナス寺院」がある。説明書によると、インド三大叙事詩の一つと言われる「ラームリラ」(サンスクリット語)を庶民にわかりやすいようにヒンディー語に翻訳した人物が、この寺院の名前の「トゥルスィー」だそうだ。「ラーマのお寺」として地元民に人気があり、ラーマの物語が壁一面に彫られ、2階ではラーマの物語をジオラマで再現しているコーナーがある。ジオラマ(仏語;diorama)は博物館の展示方法の一つで、展示物とその背景等を立体的に表現する方法である。ヨーロッパの博物館などでは子供達に人気がある。
 私はジオラマが大好きなので、「ラーマの物語」を3周も見て係員に笑われた。

トゥルスィー・マーナス寺院
「トゥルスィー・マーナス寺院」の壁に「ラーマの物語」が彫られている
寺院内部。2階にジオラマの一部が見えている
ジオラマの一部
ジオラマの終わり

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