北インド・カジュラーホー

どう説明したらよいのか
 カジュラホーはインド全体のほぼ中央に位置するマディヤ・プラデーシュ州にある村である。その規模は人口が約5,000人で、散歩気分でゆっくり歩いても20分も歩けば郊外に出てしまうほどの広さである。
 カジュラーホーに旅人が旅する目的は何であろう。旅の目的は個人によって異なることは当然として、「カジュラーホーをとらえて旅の目的を問う」のは何故だろう。旅行案内記などに書かれる愛の経典「カーマ・スートラ」を体現したような性愛交合像(ミトゥナと呼ばれる)をあからさまに寺院の壁に表現しているせいであろうか?インド人も「ジキジキ・テンプル(エッチ寺院)」とか言って、笑いながら変なアクセントで「エロイセキ、ドウゾ」と日本人観光客に勧めて、チップを要求している人もいる。もちろん、真面目な顔をして「性愛」という動物の根源的なテーマを論じ合っている(ように見える)方々もいる。本当の所は分からない。終わりのない話になりそうだ。
 カジュラーホーの寺院群は、そのエロス的な彫刻で有名である。それぞれ、西群、東群、南群に分けられているが、その中心は西群の寺院群で、村の中心でもある。これらが建立されたのは、950年頃からおよそ100年間、この一帯を支配したチャンデーラ朝の時代で、その栄華を象徴する寺院群は世界遺産にも登録されている。個人的には、この種のことに特別な嗜好?は無いので、そしてご説明できる知識も無いので、ここでは観光客の流れについて行ってカメラに収めた画像を順に並べてみよう。

西群の寺院
 西群には広々としたエリアに14の寺院遺跡が残っている。村の中心だけあって人の出入りも多いが、圧倒的に観光客が目立つ。最初に目に入る「ラクシュマナ寺院」でも、自分の目で寺院を見るというよりも、後で見るためなのか「壁面の画像をカメラに残す。記録しておく」と言った雰囲気である。
 ラクシュマナ寺院は954年にヤショーバルマン王(ヤソヴァルマン王)によって建てられ、ヴァイクンタに奉げられたものである。ヴァイクンタは、ヴィシュヌ神の化身で、三つの頭と四本の腕を有する。高さは23メートル、本堂と4つの祠堂をもち、ヒンズー教の神ヴィシュヌ神を祀っている。

ガジュラーホー西群遺跡にあるラクシュマナ寺院。とても保存状態が良い
ラクシュマナ寺院はヒンズー教の神ヴィシュヌ神を祀っている。東正面より撮った画像である
ヴィシュヌの化身である猪のヴァラハ(Varaha)があるヴァラハ寺院
中に鎮座するヴァラハの体には繊細なレリーフ(彫刻)が飾られている
カンダーリヤ・マハーデーヴァ寺院。この地に残る25ものヒンドゥー教のお堂をもつ壁面はセクシャルな彫刻によって覆われている
カンダーリヤ・マハーデーヴァ寺院にある彫刻
11世紀初頭に建立されチトラグプタ寺院。カジュラーホーエリアで太陽神スーリヤを祀るのは珍しいそうである。先に建てられたデヴィ・ジャグダンベ寺院に類似している
チトラグブタ寺院とほぼ同じ時期に造られたとされるジャガダンビー寺院。ヴィシュヌ神に献じられたのだが、本尊はパールヴァティ女神 (シヴァ神の妃)
ジャガダンビー寺院の壁面を埋めるミトゥナ像
マータンゲシュワラ寺院。唯一、現在も礼拝の対象となっている現役の寺院である
マータンゲシュワラ寺院内部。10世紀初頭に建立された。高さ25メートルの巨大リンガ(男根;シヴァ神のシンボル)を本尊として祀る
カジュラーホー考古学博物館。世界遺産の西群寺院群の入場券で入館できる

南群の寺院
 西群は寺院群が近接しているので歩いて廻ることができるが、南群と東群はそれぞれ離れているので全てを徒歩で廻ることは結構骨が折れる。ツァーに参加していない観光客の多くは、カジュラーホー村で自転車を借りてから南群に向かい、その後に東群に向かうようだ。その際、ホテルに出入りしているコミッション・ボーイ(commission boy)に何事も頼まないこと。色々な場所、色々なケースでコミッション・ボーイと名乗る人物に遭遇されると思いますが、彼らは勝手にもっともらしく名乗っているだけでスタッフではなく、紹介料が付加されるのでご用心を。ついでに、日本人旅行者から仕入れた情報ですが、ぼったくり率が高いので客引きには絶対に着いていかないこと、「サドゥ」と呼ばれるインドの修行者を写真に収めると、Rs20を要求されます。お楽しみの所、余計なことですが、後で嫌な思いをしないために。他国でこんなことを書くのは嫌ですが。

カジュラーホー村から南下してコーダル川を渡る手前にあるドゥラーデーオ寺院。彫刻が美しく、内部にはシヴァ神が祀られている。チャトルブジャ寺院の北に位置する
ドゥラーデーオ寺院
ドゥラーデーオ寺院の前室部分は、これでもかと言われるくらい、模様で一杯である
チャトゥルプジャ寺院。聖室とマンダパ(前室)だけの小さな寺院。ドゥラーデーオ寺院の 1キロメートルほど南にある
チャトゥルプジャ寺院内部
チャトゥルプジャ寺院のご本尊のヴィシュヌ神。聖室の繊細さが目立つ

東群の寺院
 西群の寺院はヒンドゥ教の寺院であるが、東群の寺院は、ほとんどがジャイナ教の寺院である。

パールシュヴァナータ寺院とアーディナータ寺院の方向を掲示
東群にあるパールシュヴァナータ寺院。10世紀半ばに建立されたジャイナ教の寺院
正面から見たパールシュヴァナータ寺院
東群のジャイナ教の寺院である
アーディナータ寺院の本尊は、ティーンタンカラ(ジナ)という24人の聖人(勝者)の1人
サフ・シャンティ・プラサド・ジェイン美術館 SAHU SHANTI PRASAD JAIN ART MUSEUM
ヴィシュヌ神の化身ヴァマーナを祀っている、東群の3つのジャイナ教寺院群の中では、比較的大きなアーチ型寺院。10~12世紀のチャンデラ王朝時代に建てられた

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