北インド・ボーパール&サーンチ

四度目のインド
 インドへの旅行は、2008年12月の公務一回を含めて4度目である。今回の旅は、私の旅行にしてはそれなりの目的をもって出かける珍しい旅である。“それなりの目的”とは言い過ぎで赤面してしまうし、新たに稿を起こすのは(失礼ですが)面倒なので、数年前に友人に出した年賀状を、これも恥ずかしいのですが、ここにそのまま転用します。

『明けましておめでとうございます。
春に恒例となった中国一ヶ月旅行に出かけ、三国志ゆかりの合肥、青島、泰山、孔子の世界文化遺産「三孔」(孔廟、孔府、孔林)がある曲阜、唐代に王侯貴族の美術品、副葬品として作られた唐三彩の収集で著名な洛阳(博物館)、敦煌の莫高窟、大同の雲岡石窟と並ぶ中国三大石窟の一つ・龍門石窟、漢字の起源と言われる甲骨文字(ヒエログリフ、楔形文字と並ぶ世界最古の象形文字)の発見で有名な安陽等々を旅してきました。
 秋には五週間をかけて五年ぶりにインドとネパールに行ってきました。そろそろの年齢?になり、また☆☆☆にも「そんなに待たせない」と言ったてまえ?…、仏教における重要な仏跡を訪ねました。仏陀生誕の地「ルンビニ」、成道の地「ブッダガヤ」、初転法輪の地「サルナート」、涅槃の地「クシナガル」、ブッダ教団の地「ラジギール」、仏典結集が行なわれた「ヴァイシャリ」、仏教大学が栄えた「ナーランダ」などです。もちろん、岩絵で著名な世界遺産ビームベトカ、二千年前のアショカ王時代の仏塔が残るサーンチ、ヒンドゥーとイスラム双方の影響を受けた建築物が点在するオルチャ、カジュラーホー、バラーナシ、そしてアルプスを望むネパールのポカラやカトマンドゥ等々も。
 私たち家族への多くの人達のご好意に感謝をしながら生活しています。
本年もよろしくお願いいたします。』

 以上、ズルして年賀状から転記させていただきました。

ニューデリーからボーパールへ
 大層な文章を御紹介してしまいましたが、数日間はいつものブラブラと言うか、肩慣らしである。ボーパール(Bhopal)とサーンチ(Sanchi)から始めます。ボーパールは、インド中部のマディヤ・プラデーシュ州の州都である。ニューデリー(New Delhi)からボーパールへは、全席が椅子席のエアコン指定車両で、「インドの新幹線」と言われる「超特急シャタブディ・エクスプレス」で向かう。停車駅はデリー、マトゥラー、アグラー、モレナ、グワリオール、ジャンシー、ボパールである。予備知識が無かったので嬉しかったのは、お茶や昼食が無料で提供されたことであった。
 インドの食習慣について詳しくなかったので、提供された順番に並べるが、これがいつも通りなのか、私に特別多くくれたのか定かではない。と言うのは、私には量が多すぎると感じたせいであるが、周りの席に乗客がいなかったので確かめようがなかった。

ニューデリー発ボパール行きの超特急シャタブディ・エクスプレスの中で最初に配られた(9時50分頃)
次に10時50分頃に配られた(朝食)
11時55分頃に配られた(昼食?)
これが12時09分頃に配られた昼食で、野菜、チャパティ、ダル、アイス等々、なかなかいける
12時32分

ボーパール
 ボーパールは、人口100万を超えるプラデーシュ州の州都であるが、いわゆる見所といった所が無い。多くの観光客は、アショーカ王の仏塔などで有名なサーンチーへの入口として訪れるようである。ただ、駅員から、湖の北側になるボーパールの旧市街にはモスクがあり、中でも「タージウル・マスジット(Taj-ul Masjid)はインド最大のモスクであると聞かされた。言葉通りだった。

ボーパール駅 2018年10月5日15時37
赤砂岩による壁面が美しい「タージウルモスク」。靴を脱げば、モスク内の広場を自由に歩くことができる
礼拝の時間を示す時計

サーンチー
 いきなりなんですが、『二千年前のアショカ王時代の仏塔が残るサーンチ』と立派なことを言っておきながら、大失敗をしでかした。カメラをホテルに忘れてきてしまったのである。忘れる時とはこんなもので、目的の仏塔(ストゥーパ)遺跡の入口近くにある考古学博物館を写そうと、カメラをバッグから取り出して、「えっつ!」。「カメラが無い」、お先、真っ暗。乾いた唇を舐めながら、ごそごそ、ぼそぼそ。博物館の入口で、コートを脱ぎながら、ごそごそ、ぼそぼそっ。怪しい男だと思ったのか、「Are you OK ?」。「アーではなくエィ you OK ?」。咄嗟に「お互いにベラベラ」。とてもスマート(smart)な中国人の青年だった。「今、私の大きなラゲッジは博物館の荷物預かりに預けてあって、受け取った後にバスでボーパールに向かわなければならない。私の写したストゥーパの写真で良ければ後でメールでお送りしますので、…、これからゆっくり実物をお楽しみ下さい」。彼も大忙しだ、メール交換を行って、「とてもありがとうございます」。なぜか日本語が出てしまった。このブログで再三ご紹介するように中国の方々にはいつも助けてもらっているが、インドでも、…。普段から我が家で仏壇に向かって手を合わせているおかげだ。「南無…」。
 お助け中国青年とは今後の移動が逆方向になってしまうが、私の場合は、ここサーンチーのストゥーパ遺跡へはボーパールのバススタンドからヴィディシャー行きに乗って約1時間半で来た。20~30分おきに出ており、また、幹線道路沿いにある遺跡入口で停車するのでとても便利である。彼は私の逆を行けば、サーンチからボーパールのバススタンドに行くことができるわけである。
 さて、そのサーンチーである。インド亜大陸をほぼ統一したアショーカ王(在位紀元前273~前232年頃)が建てたストゥーパ(仏塔)がこの地にはほぼ形を変えずに残っている。ブッダはこの地を訪れていないが仏跡の一つとして知られており、歴史的にも仏教美術においても非常に重要なことから、「サーンチーの仏教建築物群」として世界遺産になっている。
 そのなかでも、アショーカ王が基礎を築いた第1ストゥーパが最古であり、直径36メートル、高さ16メートルの規模を誇る。レンガ造りの塔には仏舎利が納められ、塔の四方には日本の鳥居を思わせるようなトーラナ(記念門あるいは塔門)と呼ばれる門がある。4つのトーラナには、ブッダの誕生から入滅までの生涯の物語が繊細に彫刻されていて、多くの訪問客がカメラに収めていた。この大ストゥーパ第1塔の他、ストゥーパ第3塔、ストゥーパ第2塔など、穏やかで美しい空間を楽しむことができる。
 今回は、特に前述した私の失敗に端を発して、素晴らしい好青年から一眼レフに収めた見事な写真のコピーをいただき、皆さんに楽しんでいただきました。皆様、ありがとうございます。

ボーパールのバススタンドから約1時間半でサーンチーへ。幹線道路沿いにある遺跡の入口で降りる。遺跡は広々とした芝生の公園にある
大ストゥーパと南塔門
西塔門の南柱中央に彫られた菩提樹。解脱したブッダの象徴
考古学博物館には、アショカ王の石柱の上に乗っていた4頭のライオンの像がある。紀元前3世紀のオリジナルのものである

ビームベートカ
 ボーパールの南45キロメートルの丘の上に、「ビームベートカ」と呼ばれる岩窟群がある。ここには、1万年ほど前の中石器時代から紀元後の歴史時代に至るまでの当時の狩猟や宗教儀式の様子が描かれた岩絵が数多く残されていると言う。1888年に公式に記録され、1950年代に一般に知られるようになったと言う。2003年に世界遺産に登録された。
 ボーパールからビームベトカには、タクシーをチャーターすると片道約1時間かかって往復料金で約Rs1,200、オートリクシャーにはビームベトカの場所を分からない運転手もいるので、経済重視でバスを利用した。ボーパール駅(Bopal Junction R.S.)西側のハミディアロードを右折した所にあるバスステーションで「ホーシャンカバードHathaikheda方面」と係員に伝えると乗車するバスを教えてくれる。2時間くらい経って降車する時も車掌が合図をしてくれる。
 問題のビームベートカであるが、旅行案内書に書かれている情報しか持っていなく、この辺りの専門的な説明や学問的な意義については、私の及ぶ所ではなく、画像を並べることでご容赦願いたい。さらに、コンパクトカメラで撮った写真画像の質についても、いつも通りお許しいただきたい。

「ビームベートカ」の入口

ボーパール州立博物館
 岩陰遺跡の見学中に何となく言葉を交わした学生風の青年から「ボーパール州立博物館」のことを教えてもらった。ボーパールは、アショーカ王の仏塔を訪ねるための「サーンチー」や「ビームベートカーの岩陰遺跡」への入口と考えていただけに、「州立博物館」の存在は、とても貴重な情報であった。数日前にボーパールに到着した時に、駅員から「タージウル・マスジット」を勧められた情報に匹敵する貴重なものである。時間もあるし、私がこれから戻る、宿泊しているホテルからも近い。とりあえず、ボーパールからここまで乗って来たバスで戻るだけで良い。
 ボーパールの街は旧市街と新市街に分かれていて、教わった「州立博物館」は新市街にあった。入口近辺で掃除をしていた若者二人が、「ニッポン」と話しかけながら握手を求めてきた。英語で日本のことをしきりに質問してくる。彼らは外回りの清掃が仕事らしく、内部の展示に関する知識は詳しくなかった。

ボパール州立博物館の入口
チケット売場
ラタン・シン(西インドの小国メーワール王国の王)との恋物語で有名なパドマーワト女神の誕生の像
クリシュナの誕生像
馬乗り
博物館の中庭
MURGHAN KHO(ムルガン島?)近郊の戦い

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